本研究は、漢字の学習方法に関する研究である。本研究では、漢字の学習法として、(1)書字練習、(2)字源学習、(3)読字学習、(4)書き順アニメーション学習、(5)空書学習などの方法について比較検討し、漢字学習の効率性を高める方法を明らかにしようとするものであった。本研究では、まず大学生を被験者として漢字学習の方法の比較、検討を行った。 我々は漢字の覚え方として書字学習をするという指導を小学生の時から多く受けてきている。この書くことについて、楠見・高橋(1992)は、日本人の最も人気の高い覚え方の一つに「書いて覚える」ことがあると指摘している。しかし、書く行為と記憶の関係を検討した研究は欧米においても、日本においても比較的少ない。しかし、漢字学習における書字練習が漢字の記憶を促進する効果を持つ可能性を示唆する研究はあるが、自然な漢字学習という事態を考えた時、これらの研究では、必ずしも漢字学習に書字練習が効果を示したものとは言えない。そこで、本研究では、既存の漢字の構成素を組み合わせて、新たに創作した創作漢字を漢字学習の記銘材料として用いた。 本研究では、8つの実験を行い、漢字の書字練習が漢字の学習促進効果を示すことを確認した。また、この書字練習は、実際に字を書くことだけでなく、空書によっても示されることも示された。さらに、その空書による学習促進は、漢字の書字プロセスを示すアニメーションと同時に進めることでより大きな学習促進効果を示した。さらに、このような書字練習と漢字テストを繰り返すことによって、漢字学習が促進されることが、短期大学生の日本語基礎学習の講義の中で実践され、その効果が示された。 以上のような書字練習による学習促進効果は、漢字の記憶表象が、漢字の構成素の形態と意味、またそれらの適切な位置関係などから構成されていることと密接に関わっていることよるものであることも確認された。
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