研究概要 |
本研究は、妄想の発生メカニズムとして有力視されている2つの仮説を検討するものである。すなわち、結論への飛躍バイアス仮説と原因帰属バイアス仮説である。 これまでの先行研究により、妄想を持つ患者は、少ない情報から強い確信に至ってしまうという判断傾向があり、これはベイズ統計学の見地から、「結論への飛躍バイアス」と呼ばれる。本研究では、こうした結論への飛躍バイアスが妄想傾向を持つ健常者にもみられるかを検討した。 実験参加者は、妄想を持つ統合失調症患者と一般大学生である。一般大学生は、ピーターズ妄想質問紙の得点によって、高妄想的観念群と低妄想的観念群に分けられた。課題は、先行研究で多く用いられてきたビーズ玉課題である。その結果、高妄想的観念群は、低妄想的観念群に比べて、情報収集の量が少なく、自分の決断に対する確信度が高いことが確かめられた。つまり、妄想的観念が高い群は、低い群に比べて、「結論への飛躍」が見られる。先行研究と合わせて考えると、妄想と妄想的観念の発生メカニズムには共通のものが存在することが示唆され、妄想と妄想的観念の連続説が支持される。 さらに、一般大学生を対象にして調査した結果、高妄想的観念群は、低妄想的観念群に比べて、ポジティブな出来事に対しては内的に(自分のせいだと)帰属し,ネガティヴな出来事に対しては外的に(他者や状況のせいだと)帰属していた。ネガティヴな出来事を外的に帰属することは,被害妄想を説明する。また,ポジティヴな出来事を内的に帰属することは,誇大妄想を説明する。
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