研究概要 |
平成15年度は,思春期(中学生)の子どもをもつ母親が子育て上で体験している心理的ストレスの内容と構造を明らかにするために,(1)質問紙を用いた自由記述形式の回答の分析,(2)思春期の子育てに関する先行研究(文献)の整理,(3)予備的な面接調査の計画と実施,などを行った。面接調査の計画と実施に際しては,2名の臨床心理士および1名の発達心理学者の研究協力を得た。 以上の作業の結果,思春期の子育てにおいては,(1)子どもの思春期への移行に対する親の認知(子どもの成長に対する肯定感,変化に対する不安と困難さ),(2)体験されている子育て感情(幸福感,積極的受容,親子の心理的境界の変化,子育てにおける統制感・効力感のゆらぎ,子育て役割の不確実性など),(3)子育て観の変化と実際の養育行動(コミュニケーションにおける独自性と結合性),(4)親自身の親子関係および夫婦関係の影響,などが重要な側面であることが明らかにされた。 また,思春期の子どもをもつ子どもの心理的ストレスには個人差が大きく,子どもの思春期的移行や変化を「成長」と肯定的に受けとめることや,適切な心理的距離を保ちながら子育てにおける効力感を維持できることが心理的ストレスや不安を抑制する重要な要因であることが示唆された。平成16年度においては,平成15年度に計画・実施された予備面接調査をさらに大規模なものとして実施する予定である。また,面接調査によって得られた知見に基づいて,親の心理的ストレスと子どもの人格発達との関連を検討するための質問紙調査の準備を行う予定である。
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