研究概要 |
本研究では、思春期における子育てとその影響のメカニズムに関する因果モデルを面接調査および質問紙調査によって探索的に検討することが目的とした。まず、研究1においては、中学生の子どもを第一子にもつ母親26名を対象にして半構造化面接を行い、その結果から「子どもの成長に対する認知・感情」と「思春期の子育て態度」という2つの養育態度の指標を見いだした。 続いて研究2では、研究1の成果に基づいて、「子どもの成長に対する認知・感情」尺度と「思春期の子育て態度」尺度を開発した。また、中学校10校(公立9校,私立1校)を対象にし、在籍する中学生1〜3年生とその保護者3543組に対して調査を実施し、2505組の有効回答を得た。因子分析の結果、「子どもの成長に対する認知・感情」尺度は、「肯定的認知・感情」と「否定的認知・感情」の2因子構造、「思春期の子育て態度」尺度は「主体性の尊重」、「威厳ある姿勢」、「適切な心理的境界」、「不安定な態度」の4因子構造であることを見いだした。下位尺度のα係数も十分の高さが示された。 また、保護者のうち、主として母親のデータを中心に分析を行った。その結果、子どもの成長に対する肯定的な認知と感情は主体性の尊重と関連し、逆に否定的な認知と感情は不安定な態度に関連することが明らかになった。また、母親の子どもの成長に対する認知と感情は子どもが認知している母親の養育態度とも関連が認められた。子どもの自尊感情と心理的不適応感については、母親が認知している養育態度よりも子ども自身の認知した養育態度と強く関連していた。
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