研究概要 |
来日・帰国外国人児童生徒の日本語指導のための場である「日本語教室(国際学級)」を訪問し,聞き取り調査を行った。平成15年11月から12月にかけて,神奈川・静岡・三重・京都・兵庫にある6つの日本語教室で聞き取り調査を実施した。 その結果,以下のことが明らかとなった。多くの「日本語教室(国際学級)」が日本語の指導のみならず,来日・帰国外国人児童生徒の心理社会的な適応の問題に直面していた。その中で,児童生徒の抱える心理社会的な問題に対して,「目本語教室(国際学級)」のスタッフが何らかの援助を行っていた。すなわち,「日本語教室(国際学級)」が日本語指導を超えて,来日・帰国外国人児童生徒への心理社会的な適応への援助の場となっていることが明らかとなった。 また同時に,来室する児童生徒の背景要因や地域の特性によって,各「日本語教室(国際学級)」でかなり異なった対応を行っていることも明らかとなった。すなわち,日系ブラジル人を代表とするニューカマー・中国残留者の親族・インドシナ難民など,保護者の来日目的や母国への帰国の可能性や,地域での外国人の集住状況などによって,「日本語教室(国際学級)」での教師の意識や実際の児童生徒への対応はかなり異なっていた。 また,中国帰国中学生を対象としたサイコエデュケーションプログラムを作成し,日本語教室において約3ヶ月間実施し,その効果を検討した。その結果,中国帰国中学生へのサイコエデュケーションの効果が明らかとなるとともに,そのあり方に関して,今後検討すべき点も明確となった。 これらの結果は,平成16年度中に京都教育大学紀要で公表する予定である。また,平成16年度は,全国の「日本語教室(国際学級)」を対象とした調査を計画している。調査研究を通して,上述した聞き取り調査の結果を数量的に裏付けるとともに,来日・帰国外国人児童生徒の適応と援助のあり方を深めていきたいと考えている。
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