研究概要 |
1 研究の目的 本研究は,治療法が急速に進歩し今や先端医療の1つになったHIV医療で長年心理臨床を実践してきた立場から,がん医療,周産期医療,生殖医療,遺伝医療,臓器移植の先端医療の5領域とHIV医療を比較し,各領域の心のケアの現状と課題を明らかにすることを目的とする。 2 初年度の研究実績 2 (1)先行研究の展望:HIV医療を含む先端医療6領域におけるわが国の臨床心理学的援助に関する先行研究を検討し,展望論文を発表した。それによると,各領域とも臨床心理学的実践及び研究の歴史は浅,心の問題や臨床心理学的援助方法は6領域に共通性が多い,HIV医療に比べて他の領域では臨床心理士のネットワークが未発達等が明らかになった。 (2)質問票調査:先端医療に従事している臨床心理士の活動の現状と課題を明らかにするために,医療領域を専門とする臨床心理士を対象に全国規模の質問票調査を実施した。無作為抽出した837名に郵送で,質問票を送付・回収した。有効回答数は449通で,有効回収率は53.4%であった。先端医療の心のケアに従事した経験者は,回答者の3割。そのうち,従事した領域は,がん医療が44.2%ともっとも多く,次いで医療16.4%,生殖医療11.9%の順であった。各領域とも臨床心理士の活動年数,担当事例数は少ない。HIV医療以外の5領域で,相談できる臨床心理士の仲間が少なく,心のケアに関する研修機会が少ないことが明らかになった。 そこで,領域による違いとその要因について,次年度にさらに詳細な調査を実施予定である。
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