研究概要 |
1 研究の目的:本研究は,先端医療の1つになったHIV医療で長年心理臨床を実践してきた立場から,がん医療,NICU医療,不妊医療,遺伝医療,臓器移植医療の先端医療の5分野とHIV医療を比較し,各分野の心のケアの現状と課題を明らかにすることを目的とする。 2 本年度の研究実績:(1)第一次調査結果の解析:昨年度末に実施した全国調査の結果,先端医療の心のケアの経験者は,回答者の3割。分野別では,がん医療が44.2%,HIV医療16.4%,不妊医療11.9%の順であった。詳細な解析結果は,次の通り。(1)臨床心理士の活動実態:回答者の経験年数や担当事例数はどの分野でも少ないが,がん医療,HIV医療,NICU医療では,ベテラン臨床心理士が2割前後確認できた。非常勤勤務が4割〜6割と多かった。職務内容は,患者本人や家族への面接と並んで,他職種へのコンサルテーションの割合が高い。(2)臨床心理士の意識:6分野とも,「医師と話せる」,「看護師と話せる」等の4項目では5割以上が肯定したのに対し,HIV医療を除く5分野では,「相談できる臨床心理士がいる」,「研修機会がある」の2項目では肯定的な回答が少なく,2割前後の分野もあり,職業的なネットワークの形成が遅れている。(2)第二次調査の実施:第一次調査で第二次調査の協力を約束してくれた50名の臨床心理士を対象に,上記の結果に対するコメント,当該分野におけるネットワークの形成状況,他の先端医療分野への参入状況等を自由記述で回答してもらう質的な調査を実施し,現在解析中である。
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