脳損傷患者の認知機能評価は、痴呆の評価を中心とした高齢者の認知機能評価とは異なり、損傷の部位、病理、経過のプロセスなどにより様々な認知傷害の様相を呈することは明らかである。平成16年度においても、脳神経外科、神経内科、精神科、放射線科に入院・通院している脳障害者の認知機能評価の目的で、検査項目の選択にあたり、いくつかの条件を設定し、琉球大学式認知機能評価バッテリーの検討を行った。 平成15年度に引き続き、平成16年度もMMSEを修正したmodified MMSEを中心にし、認知機能の全体的様相の分析を行ってきた。3MSの下位項目の検討を通して、損傷部位、病理、術前・術後の経過等でのプロフィールの分析を行ってきた。 また、前頭葉検査として位置づけられている、Stroop testとTrail making testを、健常者および、脳障害者で行い、琉球大学方式の検査方法を検討した。具体的には、この方式による標準化を行った。そのことによって、データの客観性を得ることができ、この標準化テータをもとに、脳損傷者の認知機能評価を、病理、術前・術後の経過等を変数として検討してきた。 認知機能の評価には、量的評価と質的評価が必要であり、一般には、量的評価のみが優位に利用されがちでありが、量的評価の客観性を高めるためには、質的評価をどのように組み込むかということの視点を、fMRI等の神経画像との関係で検討を行っている。さらに、実験心理学的検査の導入を考案中である。
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