研究概要 |
自己報告式の性格検査において重要な問題の一つは,意図的に回答を歪める受検態度などによる逸脱回答の検出方法の開発である.この検出方法として,項目反応理論に基づくperson-fitの利用可能性を検討するため,faking-good(よくみせかける)群,faking-bad(悪くみせかける)群,標準群の3群(順に58名,62名,377名)にそれぞれの受検態度でMMPIを受験させ,基礎データを収集した.このデータに対して,person-fitを算出したところ,person-fitによってfaking-badは明確に検出できることがわかったが,faking-goodの検出は困難であった。この結果は従来の偽装的な受検態度を検出する指標による結果と同様であった.現在,person-fit指標に改善を加えて,faking-goodの検出が可能なような改善を検討している.また,同一被検者にさまざまな態度を受験させ,受験態度間の個人内の変化の検討のためのデータ収集の準備をしている. ある特性を健常群はもつが臨床群はもたない,あるいはその逆という可能性を検討するために,臨床群のデータを,病院勤務の臨床心理士の協力のもとで収集しだしている.さらに,このデータから臨床群の検出のためにperson-fitが適用できる可能性を検討する予定である. 双極性の性格の特性概念を表す性格記述用語には反対語は存在するが,単極性の特性概念の場合には反対語はないという仮定を検証するために,性格記述用語の調査をする.この準備である,性格記述用語の収集と調査票の作成を終えた.
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