今年度は、調査の最終年度であるため、研究実施計画にも記載したように、あらたな資料を集積することよりも、これまでに得られた資料の整理と分析、また、足りない部分を補充していく方針で進めた。 これまでの調査の結果を総合してみると、ラテンアメリカ日系人と日本人の心理の近縁性が明らかになり、森田療法アプローチの日系人についての有効性が実証されてきている。しかし、計画の初期に予想していなかったこととして、ラテンアメリカ日系人の場合、MMPIと神経質調査表において、値が日本人より有意に高い尺度がいくつかみられることが明らかになっており、端的に言って、ラテンアメリカ日系人の方が、より「神経質」的とも言えることになる。 森田療法学会では、現代日本において、神経質性格と神経質症状の変化が顕著になっており、森田正馬の時代、すなわち、100年前の日本と時代精神が変わってきているとして、すでに議論されてきている。しかし、本調査ではむしろ、100年前の日本人のパーソナリティとして森田正馬が取り組んだ、神経質傾向やその症状が、むしろラテンアメリカ諸国の日系人の中に今なお残っており、日本の現状とやや異なった様相を呈していることが明らかになり、興味深い結果となっている。 以上にような、本調査で得られた観点から、今年度は、すでに集積された資料の整理とまとめ、位置づけを行ないながら、移民県である、沖縄県立図書館/同資料館、メキシコの日墨協会へ出向き、集積資料の検討をした。最終年度の報告書作成作業を開始し、具体的構成等を進めている。
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