筆者は2003年度は、(1)ロスアンゼルスの「チルドレンズ・コート」(児童保護裁判所Juvenile Dependency Court)での裁判傍聴、さらに(2)葛藤の高い児童虐待ケースにおける裁判所付属のメディエーション(調停)利用による解決の実態調査を行うこと、(3)また虐待親や被虐待児に対してどのようなケアやサービスが「ケア受講命令」として出されるのかを調査してきたいと考えていた。また(3)司法、福祉、精神衛生の専門家そしてCASA (Court Appointed Special Advocate)など他職種間での連携のあり方についても調査してきたいと考えていた。 今回のアメリカでの裁判傍聴で出会ったケースとして、DV関連の児童虐待事件と、薬物依存と関連した子どものネグレクト事件が多いという印象を受けた。前者のケースとしては、例えば、父親に何度かのDVを原因とする逮捕歴がありまた母親もこれまでに入院・手術を要するほどの深刻な暴力を受けており、「家族維持プログラム」からカウンセラーが派遣されているにもかかわらず、両親とも、事の重大性、特に暴力に子どもを晒すことの悪影響についての認識が薄いために、ついに児童保護局が子どもが一時保護したようなケースである。両親に対する「ケア受講命令」の内容は、(1)親業クラス、(2)個人カウンセリング、(3)ドメスティック・バイオレンス/怒りの管理プログラム受講というものであった。子どもに対するケア受講命令は、(1)症状として出ているADHDに対する処方薬の飲用、(2)週一回の個人カウンセリングであった。後者のケースとしては、若い親が薬物使用と子どものネグレクト事件(時には死亡事件)で逮捕され、囚人服と手錠姿で出廷しているようなケースであった。ケア受講命令としては、(1)薬物使用に対する治療とその後は(2)ダーティ・テスト(ランダムに薬物使用の有無をテスト)というものであった。日本でも若い層に薬物使用が急激に氾濫してきている昨今、こうした問題が今後、大きな社会問題になることが予想される。
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