研究概要 |
平成17年度は、「通常教室における子どもの行動アセスメント」の最終段階として、5つの小学校の低学年、通常教室における児童の機能的・記述的行動アセスメントを継続する一方、平成16年度の観察データの集計を行った。結果、26項目よりなる「教室における行動チェックリスト」の最終版を完成した。26の行動は、児童が通常の学級で授業に参加していないときに記述観察された行動である。大学院生11名と学部生2名が「教員補助者」として通年毎週1日教室で支援を行ったが、3学期はこの「教室における行動チェックリスト」を用いて、支援に入った教室の行動パターンおよび教室で個別支援の対象になった児童と支援を必要としなかった児童の行動パターンを調べた(最終データ集計中)。通常の学級における特別支援の方法については、平成16年度の成果を踏まえ、今年度も学会(日本行動療法学会、日本心理臨床学会)のワークショップや教員を対象とした研修会(全国学校相談研究大会、京都学校相談研究大会、神戸市小学校教育研究会特別支援部)、および支援対象校の教員研修会と巡回相談において講習した。本基盤研究の枠内における通常教室における新たな実践研究は、学校の教員と協働して、修士論文研究や大学院研究プロジェクトとして教員補助者である大学院生が遂行し、筆者はそれを指導した。学級単位のソーシャルスキル訓練、抑うつを示す児童の社会的相互作用の行動分析、特定児童の問題行動の時系列・逐次分析の研究などがその例であるが、いずれも通常教室において行動的アプローチの導入が可能であることを示している。低学年における姿勢改善プロジェクトの成果は「行動分析学研究」(大対・野田・横山・松見)に採択され印刷中である。国際学会(International Applied Behavior Analysis Conference, Association for Applied Behavior Analysis)と国内・全国学会でも成果を発表した。このように、多様性が増す通常教室に行動アセスメントを導入することで、学校の協力の下、さまざまな実践的研究を遂行できるシステムを構築できたことは本基盤研究の大きな成果である。これらの実証研究の概念的基盤である「科学者-実践家モデル」については、図書「心理学の新しいかたち」(2005)(分担執筆)に記した。
|