研究課題
基盤研究(C)
人間は特定の感覚情報を選択的に処理することができる。本研究の目的は、注意の選択を受けない刺激(非注意刺激)の情報処理過程を検討することで、人間の選択的注意の機能を明らかにすることである。平成15年度は、ストループ様課題を用い、視覚の選択的注意機能を検討した。ストループ様課題とは、視野周辺の色名単語(非注意刺激)を無視しながら、中央の色パッチ(ターゲット)の色名を報告するものである。両者が異なる色名を表す条件の反応時間が、同じ色名を表す条件の反応時間と比較して遅延する現象は、ストループ様効果と呼ばれ、非注意刺激の不随意的意味処理の証拠となる。本研究では、課題遂行の際の難易度(負荷)を操作し、ストループ様効果が消失する実験状況を探索した。実験の結果、ストループ様効果は、ターゲットと類似した刺激が複数提示される場合に限り消失した。その他の負荷の操作(例えば、go/no go課題等)では、効果は消失しないか、逆転することが明らかにされた。以上の結果から、視覚における選択的注意は、同時に処理可能な刺激個数に容量限界があり、この限界を超える場合にのみ、非注意刺激の不随意的意味処理を排除する可能性が示唆された。平成16年は、選択的聴取課題における発話映像の影響を検討した。選択聴取課題とは、左右二つの音源から二つの異なる単語系列を提示し、空間位置に基づいてどちらか一方の系列を聴取するよう、実験参加者にもとめるものである。本研究では、報告すべき系列(ターゲット)と同時に、単語を発話する視覚映像を提示した。実験の結果、発話映像の口の動きがターゲット単語と一致している条件では、発話映像の口の動きを隠したコントロール条件と比較して、単語聴取成績が向上することが明らかにされた。また、発話映像の口の動きが無視すべき系列(非注意刺激)と一致している条件では、コントロール条件と比較して、系列の先頭単語の聴取成績のみが向上し、それ以後の系列の聴取成績が低下する傾向が認められた。つまり、視覚映像刺激はターゲットと一致している場合や、非注意刺激と一致している場合にもごく短時間の間には、聴覚の選択的注意機能を向上させる働きを持つが、それ以外の場合には妨害的に作用する可能性があることを示している。本研究では、上記の成果に加え、視野闘争や計数課題等、様々なパラダイムにおいて、非注意刺激の情報処理過程が検討された。
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