研究概要 |
本研究の目的は、声質の認知において話している言語(日本語と米語)の韻律情報が与える影響について検討することであった。言語が話者および聞き手にとって母語であるか非母語であるかにより、その認知がどのように変化するのかを調べること、声質の記憶について調べることを中心的課題とした。 平成17年度は韻律情報と声質情報との相互作用を明らかにすることに加え、声質についての記憶について調べるための認知実験を行った、実験に用いた刺激は、平成15年度に収集した音声資料(短文を自然な会話として発話したもの)と平成16年度に追加して収集した資料をもとに作成した。実験方法は、話者が日本人およびアメリカ人である場合について、それぞれ母語(日本人に対しては日本語、アメリカ人に対しては米語)の場合と、外国語(日本人に対しては米語、アメリカ人に対しては日本語)の場合の4条件を設け、日本人被験者に対して、話者の声質についての印象評定を行った。その結果、言語(日本語VS.米語)と話者(日本人VS.アメリカ人)との間に交互作用は認められず、話者の話す言語が聞き手にとって母語か非母語(外国語)かが重要な要因であることが分かった、,また、外国語を話している場合の方が、低く細い声であると評価される傾向があることなどの点が認められた。この実験結果は韻律情報が声質情報に影響を及ぼしていることを示唆している。さらに、声質の記憶は頑健であり、1週間という長い空白時間にもかかわらず、再認成績は高いことが認められた。本研究では日本人話者が母語(日本語)で話した場合にも非母語(英語)で話した場合にも、その保持成績はほぼ同等に高いことが示され、声質の記憶は話者の話している言語による影響をほとんど受けずに保持されていることも明らかにされた。以上、いくつかの新しい知見を得ることができたが、その一部は学会発表を行い、論文にまとめた。
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