研究概要 |
興奮型心理的カウンタメジャーとは,検査対象事件に関連しない質問に対して被験者が故意に特異反応を生起させるカウンタメジャーである。検査対象事件に関連する質問と関連しない質問の両方に特異反応が生起すると,二つの質問の反応に差異が見出せなくなる。そのため,被験者が検査対象事件に関連する質問に虚偽の返答をしていても,そのことを検出することができなくなる。これが興奮型心理的カウンタメジャーによる検出回避の方略である。興奮型心理的カウンタメジャーに対する頑強性については,これまで検討されていなかった。頑強性が明らかになることは,P3を指標に用いた精神生理学的虚偽検出の実務への応用可能性を評価するために重要である。そこで筆者は,P3を指標に用いた精神生理学的虚偽検出の興奮型心理的カウンタメジャーに対する頑強性を検討した。 平成15年度から平成16年度の2ヵ年にわたり「科学研究費補助金(基盤研究(C)(2)15530482)ERPを指標に用いた虚偽検出における興奮型countermeasureの効果」を受けて行った研究の主要な成果は以下の通りである。 1.興奮型カウンタメジャーを行うことで,興奮型心理的カウンタメジャーの対象になった非裁決刺激(以下CM対象刺激)には裁決刺激と同程度の大きな振幅のP3が生起する。そのため,CM対象刺激に対する反応も含めて判定を行う場合,興奮型心理的カウンタメジャーによって検出成功率は有意に低下する。 2.CM対象刺激に対する反応を除外して判定を行うと,興奮型心理的カウンタメジャーによる検出成功率の低下はみられなくなる。 3.裁決刺激には被験者にとってより重要と認識される情報を用いること,裁決刺激と非裁決刺激の識別度を低くすること,これらにより検出成功率が向上する可能性がある。
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