本研究は、現代の学校経営改革が達成すべき自標のひとつとした学校の裁量権拡大の進展状況に見られる校長の意思決定構造の変容を学校調査を通して解明することを目的としたものである。 1990年代から展開した現代の学校経営改革は、自律的学校経営の構築、学校の経営責任の明確化、参加型学校経営と並んで、学校の裁量権拡大を改革原理に求めた。改革の展開過程で明らかになってきたことは、校長の権限拡大を軸とした学校経営の構築が大きなウエイトを占めた改革であったということである。そのために校長のリーダーシップを発揮しやすくする制度的、組織的支援システムを構築するという構図がつくられてきている。校長の資格緩和、職員会議の補助機関化、学校評議員制の導入、学校評価の制度化などは校長の意思決定構造にこれまでと大きく異なる変化を刻んできている。その変化実態を解明することは、学校の裁量権拡大を改革原理とした現代の学校経営改革の本質、性質を検証する大きな手がかりとすることができる。 研究期間(平成15年度〜17年度)における研究成果の概要は以下の通り。 (1)校長、教員へのインタビューを通して改革による学校の変化をリアルに把握し、調査のアウトラインをつくる努力をしてきた。そのなかで民間出身校長へのインタビューを重視してきた。その成果の一部は「校長の意思決定行動に関するインタビュー記録」(51頁)としてまとめている。 (2)アンケート調査は小学校、中学校、高等学校の校長に対して行った。調査内容は、学校経営改革による学校の変化、校長の意思決定行動の変容、校長の意思決定の条件についてである。調査地域は、学校経営改革に特徴を際だたせている大都市圏3地域とした。その成果は、研究成果報告書「学校の裁量権拡大と校長の意思決定構造の変容に関する研究」(115頁)にまとめている。 今後、学会発表等で発表し、社会的責任を果たすことにしている。
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