研究課題
基盤研究(C)
本研究は、1990年代アメリカ教育思想の展開過程における公共性のとらえ方とその変容を、シティズンシップ概念をめぐる相克に着目して明らかにし、それによって、21世紀の公教育を方向づける思想としてのシティズンシップ論を展望しようとしたものである。その際特に、以下の二つの点に注目した。第一に、これまでのシティズンシップ論が国民国家としての福祉国家を前提としてきたことを批判し、その国民概念の組みかえ、脱構築によって、国民国家に代わる新たな公共性を模索し、それを根拠づける概念としてしてシティズンシップ論を組みかえようとする、共同体主義(コミュニタリアニズム)からのリベラリズム批判、多文化主義、ラディカルデモクラシーなどの諸潮流である。第二に、1980年代以降の福祉国家の再編によってシティズンシップの獲得と、それによる成人期への移行が困難になりつつあるという、成人期への移行の困難性の課題である。以上の二つの点をふまえたうえで、本研究では1990年代のアメリカ教育改革と、その背後にある思想動向に着目した。1990年代のアメリカでは、上述の二つの動きがまさに交錯したところで、シティズンシップのとらえ直しをめぐる議論が激しく行われ、その相克も顕在化したからである。本研究の作業によって、1990年代のアメリカにおけるシティズンシップの思想史的文脈を規定していた二つの流れとして、ボランティア的シティズンシップ論と政治的シティズンシップ論の対抗関係が明らかとなった。また、今日のシティズンシップと公共性をめぐる思想的相克を、ポスト福祉国家段階における生政治の変容下での「包含と排除」のポリティクスと「複数性のポリティクス」をめぐる相克として位置づけ、特にその後者(複数性のポリティクス)の可能性と条件を展望する枠組みを導き出すことができた。
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