研究概要 |
本年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 第一に,昨年度から継続して取り組んできた,教育政策変化を規定する要因分析(とりわけ行政組織の内部要因と外部要因との関連分析)について一つの区切りをつけることができた。以前の時期にも,同様の内容を志向する教育改革への試みがあったにもかわらず,なぜ1990年代後半以降になってはじめて総合的な教育改革政策が実現されるに至ったのかの背景要因について行政組織論的視点から明らかにした。まず組織内部の要因として,従来の文部省においては長らく原局優位の政策決定が続いてきたが,80年代と90年代との二つの段階を経て次第に官房部門が強化されてきたこと,また組織の外部要因として,省庁縦割り制が支配的だったあり方から内閣レベルでの政策統合・調整が進んだこと,これら両者が相互に規定しあって,90年代の教育改革政策が実現されたことを示した(以上の成果は青木栄一との共著論文として2本の学会誌に掲載された。2004年10月,11月)。 第二に,最新の教育改革政策の分析を行った。特に,公立学校の設置・管理運営に関わる制度改革の動きとその性格について検討した。学校運営協議会の制度化や公立学校における公設民営方式の許容(いずれも2004年。ただし公設民営は特区で幼稚園と高校のみ)など,従来のあり方とは異なる新しいタイプの公立学校を模索する動きが活発化していること,これらの改革動向は,設置者管理主義の原則を実質的に大きく変える可能性をもっているという点で注目すべき改編であること,を明らかにした(これについては2004年8月日本教育学会で報告を行った。)。戦後日本の学校教育法制において,設置者管理主義はいわば自明の枠組みとされてきたわけだが,このような現在進行中の変化の性格を明らかにすることを通じて,従来の学校設置・管理政策の歴史的意味を浮き彫りにすることが次の課題である。
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