研究概要 |
本年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 第1に,昨年度までの研究では,1970年代以降の時期をおもな研究対象として設定してきたが,本年度は1950年代に遡り,それとの比較対照から現代教育改革政策の歴史的特質について検討した。現在進行中の改革によって大きく変えられつつある教育行政制度体系がほぼ確定したのが1950年代であった。同時期において,戦後改革で導入された平衡交付金制度が廃止され,現行の義務教育費国庫負担制度が(復活)発足した。また公選制を廃止し任命制の教育委員会制度に移行したのも同時期であった。現在,戦後の制度体系の根幹をなしてきたこれらの制度群が相次いで大きな改革の俎上にのせられている。これは,戦後的な制度体系それ自体が大きく揺らいでいることを意味するだけでなく,その背後に政策形成・決定様式における大きな変化が起きつつある点を認識することが重要である。つまり,従来型の枠組みとは異なる政策形成・決定形式が生起しつつあり,それが現在の改革を推し進める重要な要因となっている。 そこで第2に,現代の改革政策が変えつつある対象のレベルを区別し,またその変化の性格を評価するための理論的な枠組みについて再検討を行った。具体的には,政策変化を2つの側面,すなわち制度内容面での変化と,その内容変化がもたらされる手続き・形式面での変化とを区別し,その理論的な含意と実証への適用について検討した。とくに,後者の政策形式面での変化は,内閣府の設置にみられるような政策統合機能の強化や,地方政府の首長やその連合体(知事会)が国政レベルについても大きな影響力をもつようになるなど,既存の政策アクター間の関係を大きく変えつつある点でより重要である。2005年の三位一体改革と義務教育費国庫負担金の改革過程はそのことを象徴的に示す事例であった。
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