平成15年度においては、(1)研究目標達成のための関連文献の収集を精力的に行った。特に、池田小学校事件前後から多く出版された学校の危機管理マニュアル及びそれに関わる学校経営学領域の書籍、文科省の安全教育関係資料、文教施設協会の調査報告書、日本PTA協議会の取り組み関連資料、日本体育・学校健康センターの資料などを収集し、分析した。(2)複合的な学校施設における実態調査(施設・設備の整備の実態調査及び関係者へのインタビュー調査)を幾つかの学校、地域において行った。具体的には、学校と公民館・図書館の複合施設である志木市のいろは遊学館、我が国初のPFI事業によって建築された小学校である調布市立調和小学校など全国5地域にわたる複合的な学校施設での実態調査及び学校を支える教育委員会への調査を行っている。以上の文献収集及び実態調査から、学校を設計する側の意識と使い手である学校側の意識には少なからずギャップが存在すること、先進的な学校施設をもち、安全教育にそれなりに配慮していると思われる学校においても、安全管理に関しては試行錯誤の状況にあることなどが明らかになった。また、危機管理に関わる書籍等は多く出版されているが、教育学分野での研究論文は必ずしも多くはなく、建築学の分野においては、人的対応による防犯対策を保管する「防犯設計」の研究はなされているが、建築(計画)学の主要な分野になってはいないことも明らかになった。これらのことから、子どもの安全を守るという喫緊の課題に対して、今後、教育学(ソフト面)と建築学(ハード面)との融合が求められているといえる。 平成16年度においては、いろは遊学館、志木小学校における実態調査(教職員、利用者へのアンケート調査を含む)を継続的に行うとともに、平成15年度の実態調査を踏まえて、海外(英国)における学校の安全管理の実態調査(教育技術省及びPFIによって建築され、PFIスタッフが学校管理の一翼を担っているハイランズ・スクールでの資料収集・聞き取り調査)を行い、これからの我が国の学校の安全管理の在り方について示唆を得た。
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