研究概要 |
本研究プロジェクトの2年目である平成16年度は,前年度の研究成果を踏まえ,主として(1)教育学部における教育実習を含む「臨床経験科目」を受講した学生による「プロセスレコード」の作成とその指導,(2)教員養成・教師教育カリキュラムにおける「臨床経験科目群」の体系的実施の方策の探究と「臨床経験」のリフレクションへの「プロセスレコード」の適用可能性,の2点について研究を発展させた。 (1)教育実習を含む「臨床経験科目」を受講した学生による「プロセスレコード」の作成とその指導 本学教育学部附属学校において教育実習を行った学生(主として3年次生)の協力を得て,「教育実習事前・事後指導」との連携のもとに,教育実習における授業実践及び生徒指導場面をプロセスレコード化することを試みた。学生によって作成されたプロセスレコードの分析を行うとともに,看護教育の専門家の協力を得て,プロセスレコードの評価を依頼し,専門的立場からの助言とコメントを得た。その結果,教育学部学生が作成したプロセスレコードには,児童・生徒の言動の客観的記述と記載者の解釈・判断が混在する傾向があり,児童・生徒理解と実習生自身の判断のリフレクションを区別することの困難さが存在していることが判明した。さらに,実習生(教師)の内的思考や判断が的確に「臨床場面」に即して表現されにくく,教育実践の場面において瞬時の判断を行うことの困難を実習生が感じていることが明らかになった。 (2)「臨床経験科目群」の体系的実施の方策の探究と「臨床経験」のリフレクションへの「プロセスレコード」の適用可能性 本学部において企図されている「臨床経験科目」の体系化において,臨床経験をどのようにリフレクションし,そこにプロセスレコードをどのように活用するかという課題について探究した。1年次から4年次までの系統的な臨床経験の中で,自己の教育体験の相対化と教師の職務を臨床的に学修するうえで,プロセスレコードによる臨床経験のリフレクションは,自己の教育行為や子どもとのコミュニケーションの適切性を振り返る上で有効であることが明らかにされた。リフレクションの方法として,学生が個別に実践を振り返ると同時に,実習生同士がそれぞれの「省察」を共有しあうことも重要であることが,他大学(滋賀大学,横浜国立大学等)への調査からも明らかになった。平成17年度には,教育実習生全員のリフレクションの方法としてプロセスレコードを活用し,実践的指導力の育成を図るとともに,熟練教師のそれとの比較検討を行う予定である。
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