2003年度には台湾およびカナダで資料調査を行った。台湾では台南長老教中学関係の資料調査を進め、カナダではカナダ長老教会文書館において淡水中学院関係の資料を調査した。また、台南長老教中学の教頭であった林茂生がコロンビア大学に提出した博士学位論文の分析を進め、研究成果を教育思想史学会の機関誌『近代教育フォーラム』に公表した。 2004年度にはアメリカ国務省文書およびアメリカ長老教会文書を調査した。これは、台湾におけるイギリス系のミッション・スクールをめぐる動向が朝鮮におけるアメリカ系ミッション・スクールをめぐる動向と密接に連関していることに気づいたためである。 2005年度には、ロンドンのイギリス公文書館において、イギリス外務省文書、イギリス海軍省文書などの資料調査を行った。このような資料調査が必要だったのは、台湾におけるイギリス系ミッション・スクールに対する排撃運動が、同時代の日英関係における軍事的・政治的な緊張に連動していることが判明しているためである。具体的には、イギリス船籍の船の船員が台湾の軍部によってスパイ容疑をかけられた事件が「反英運動」としての性格を持っていることを明らかにした。 これらの作業を通じて、1930年代の日本内地・台湾・朝鮮において神社参拝問題を契機として展開されたミッション・スクール排撃運動が相互に複雑に連鎖していたことを論証し、その研究成果を『立教学院史研究』と『岩波講座アジア太平洋戦争』に公表した。 このほかに、植民地主義研究の方法論についてまとめた論考を『年報日本現代史』に発表、欧米帝国主義と日本帝国主義を統一的な視野から問題とする必要性について論じた。
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