1.特に「生徒指導専門員」の法的地位と職務権限について、整理と分析をおこなった。待遇的にも教員と同等の給与を保障され、かつ大学院レベルで専門的な養成を受ける生徒指導専門員は、学校職種の中で人気も高く、採用試験における競争率も年々高くなっている。主として教室内での教授活動を担う教員とは異なり、生徒の学校内における生活面全体に関する監視と指導、そして相談業務をおこなうという立場は、事実上の副校長の職責に相当するものである。 2.教職員間の分業と協業との関係についていえば、職務内容が職種別に明確であり、校務分掌のような協働体制がほとんど存在しないことがフランス学校の特質である。しかし生徒の社会的・家庭的背景をめぐる深刻さが加わる中で、教職員全体での情報の共有や諸対策のキーパーソンとしての役割を、生徒指導専門員は果たしていることが明らかとなり、幾つかの論文を発表した。 3.但し、教育優先地域といわれる、教育的に優遇配慮をおこなうことが必要な場所に位置する学校においては、厳しい職務内容となっており、地域的には大きな格差が存在していることも確認できた。同時に協業の場を作り出す契機となるはずの各種の協議機関も十分に機能していない場合が多い。そういった意味からは、生徒指導の専門員を特別には置かずに、すべての教職員が教科指導も生徒指導も担うという日本のシステムの方が、時代と社会の変化と学校の抱える課題に対して、柔軟に対応できる利点を多く持っていると考えられる。 4.文献調査および国内の研究者との研究視点との交流に重点をおいたために、当初予定していた現地調査による全国生徒指導専門員協会(ANCPE)によるレビューを受けることは実施出来なかったが、最終年度に向けての準備を進めている。
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