1.わが国では、1965年に文部省が『生徒指導の手引き』を公刊して以後、教員の役割あるいは学校の機能として「教科(学習)指導」と「生徒(生活)指導」は車の両輪であり、重要な使命であると言われて、40年以上が経過した。他方、フランスもその頃に、生徒指導の固有の重要性が認識されはじめたが、それは当然のごとく教員が担うものではなく、そのための固有任務を遂行する別の職種(生徒指導専門員、CPE)を創出し、基本的に分業体制をとり、これらが互いに協力体制を組むことによって、生徒の学校生活の改善充実を図っていくことが目指されてきた。 2.生徒指導専門員は、制度発足後30余年を経過し、特に1990年代以後は、深刻化する暴力・非行や怠学、学習意欲の減退などの教育病理に対応する必須の存在として、他方では学校の管理運営に生徒代表を積極的に参加させながら市民性を育成するためのコーディネータとしての役割を担ってきている。専門分化し個業化された学校の多様な領域を、校長や副校長だけで統合していくことは不可能に近く、その意味で生徒指導専門員は、「学校制度の中心に位置」し、調停役でもあり、職場の人間関係をつなぐ存在と評価されている。 3.本年度は文献調査とその分析が主となったが、学校教育への「期待」の増加傾向によって、生徒の保護者との関係保持のあり方が深刻なものとなりつつある。フランスの場合は、この生徒指導専門員が、家庭・保護者との連絡調整の役割を担っている。他方で我が国の場合は、総合職的な役割を担う教員がすべての任務を果たすこともあって、時として深刻な事態に陥っている。学校の役割と守備範囲のあり方と関係して、分業と協業のもつ意味についても考察した。
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