研究概要 |
本年度は,実証的研究を進展させることをねらいとして,昨年度実施した調査研究をもとにして,調査項目を修正するとともに,大都市部を含む都府県を調査対象地域として,質問紙調査を実施した。調査目的は,(1)学校の組織化傾向を個業化,統制化,協働化の3側面から明らかにすること,(2)学校の組織化傾向の特徴が学校の教育活動に及ぼす影響を明らかにすること,(3)学校の組織化傾向を規定する学校内外の要因を探究すること,等である。対象地域は,宮城,千葉,東京,静岡,愛知,大阪であり,それぞれの都府県から25%の小学校を無作為に抽出した。調査対象校の総数は1317校である。各小学校の校長と学級担任3名を調査対象者とした。調査票の回収数は,校長用438票(配布数に対する回収率33.3%),担任教師用1264票(同32.0%)であった。 分析の結果,おおむね前年度の調査結果を支持する結果が得られ,学校の組織化傾向を把握するための尺度(個業化,統制化,協働化)が確認された。また,学校の組織化傾向と学校の教育活動との関係については,(1)学校の個業化傾向が強まるほど,教員が認知する指導上の困難が増大すること,(2)教員の学校改善志向に対しては,協働化と統制化はポジティブな影響を持つが,協働化がより強い影響を持つこと,(3)個業化の進展によって,教員の学校改善志向が低減すること,などが明らかになった。これらの結果から,学校組織の個業化が教員の教育活動に及ぼす阻害的な影響が明らかになるとともに,学校組織の変革・改善の方向性としては,組織統制化だけでなく,むしろ協働化を図ることが重要であることが示唆された。さらにこれらの結果は,本研究課題においてこれまで進めてきた学校組織開発に関する基本理念と方法論の妥当性を支持するものといえる。
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