本年度は、まず、6月5日の比較家族史学会において、「ワイマール期における<ドイツ子だくさん家族全国連盟>と母の日-ドイツ・アメリカ・日本を対象とした比較社会史的考察から-」という報告をおこなった。これは、これまで、調査してきた「大家族全国連盟」に関する分析に加えてその周辺の政治的イデオローグたちの言説を分析したもので、ドイツの部分を中心に、アメリカに関する比較の観点もくわえて報告した。議論においては、多くの会員から非常に有益な情報や視点をえることができた。特に今回、本発表の中では、1920年代の政治的に力を持ったイデオローグたちが、子だくさん家族とその母親を推奨し、他方で子どもを産まない家族を批判していたことに着目したが、その部分を、「少子化が社会問題となる時代-20世紀初頭のドイツにおける二人っ子システム批判を手がかりにして-」という論文をまとめ、『教育学研究』(日本教育学会)12月に刊行した。 これと同時に進めたのが、近代社会のジェンダー観の分析である。母の日は、社会が女性をどう見ているかを明確に反映するものであるといえるが、当時のジェンダーバイアスを分析する方法論を検討した論文を書き、その他研究協力者とともに『マスキュリニティ/男性性の歴史』という本にまとめ、その編集を担当した。 今年の資料の収集に関しては、アメリカ合衆国アリゾナ大学で資料調査をおこなった。昨年度資料収集では、母の日の制度化に関する議会関係資料を中心に集め、その過程で、議会でのキーパーソンである下院議員(のちに上院議員)Heflin氏の関係資料がアリゾナ大学に集められていることがわかったためである、3月にアメリカ渡航し、資料収集をおこない、たいへん貴重な史料を収集することができた。ただ、非常に個人的な手紙などに関しては、今回見ることができなかったので、また、改めて収集の機会を持ちたいと考えている。
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