研究概要 |
本研究は、1920年代において、家庭教育がどのように議論され、どのような役割が求められたのかを、明らかにすることを目的とした。このことは、列強の競合する時代に、国民国家としてのアイデンティティの強化が求められるなかで、近代家族がどのような役割を果たしたのかを分析するものである。 本研究におけるキーワードは<母の日>である。1920年代という時代に、国際的にどのように議論されたのか、また国民国家内部でどのように議論されたのか、多くの国家で母の日が制度化されていく際の議論をその相互の関連性を検討した。母の日が創出されたアメリカでの議論、国民国家の再建という課題をおったドイツにおいて母の日が果たした役割を、ドイツとアメリカとの緊張関係に注目しながら分析し、国民国家と近代家族の緊張関係を明らかにすることを試みた。 研究成果は大きく分けて二部構成となっている。第一部では、1920年代前後における母の日と家族に関する議論をまとめた。Kodama, 2003のMather's Dayの論文は、2003年にミネソタ大学比較女性史ワークショップにおいて報告したものを、ワークショップ参加者の助言をふまえて再構成した。小玉2006の「母の日」の論文では、議会資料を追加して議論をすすめ、小玉2007の「父の日」の論文は、父の日の成立過程を明らかにすることにより、いっそう母の日の役割が浮かびあがることから執筆されたものである。さらに、小玉2004の「少子化」に関する論文は、ドイツで母の日が普及する背景となった、出生率低下という社会問題を検討したものである。さらに、小玉2007の「ヴァイマル憲法」の論文は、母の日がドイツで普及したヴァイマル期の国制のなかで、家族と母性に関する議論を分析した。 第二部では、親子関係、家族関係に関する、現代日本における言説分析をおこなった。1920年代の比較家族史研究は、現代日本における家族分析を考慮することによりいっそう現代的意義が浮き彫りになると考えている。今日的問題を射程にいれて歴史を検討する、その試みのための現代分析の論文も執筆した。
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