研究概要 |
本年度は、第一に、昨年取り組んだカリフォルニア州の免許状更新の仕組みに関して、さらに、免許更新制度とカリフォルニア州の免許政策の歴史的・政治的背景との関連性について検討した。免許状更新の仕組みが、州の一定の枠組みの中で、教師個々人の主体的な発達や職能成長を求めることを認める仕組みになっていることの背景には、教職の専門性や教職の専門職的自律性の理念が背景にあり、それは、個々人のレベルと同時に、州の免許委員会の仕組みにも反映されていた。こうした専門職としての教職観は教員団体によって支持されているが、カリフォルニア州以外の州ではどのようになっているのかが、第二に検討したテーマであった。その結果、例えば、アリゾナ州は、カリフォルニア州とは対照的に、教師を「専門職」としてよりも,「公務員(官僚)」としての側面を強調し、アカウタンビリティーを求める免許政策を採用していた。さらに、2000年に免許状制度を刷新したイリノイ州では、その免許状更新要件としての職能成長の取り扱いについて、教員団体と経済界との間での対立があったことが明らかになった。第三に、1987年から始まった全米教職基準委員会(NBPTS)免許状(より優れた教師を見いだし認定する全国的な免許状制度)について検討した。その結果、その取得プロセス自体が、現職教師にとっての重要な職能成長のひとつであった。また、その更新(10年ごとに更新が必要)に必要な「職能成長」の内容(2005年に発表された)についても検討し、その特色を明らかにした。
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