平成15年度から17年度まで3カ年間の研究計画の第一年度に当たる本年は、第一に、ドイツ各州の「学校プログラム」政策の進行状況の整理を課題とした。全16州の学校法レベルの改革動向をまとめ、教育法制関係の研究会において報告する機会を得た。また特に「学校プログラム」を充実させるための財政的方便として広まりつつある「学校スポンサリング」について、具体的実践例、法的整備の状況、理論的実際的な問題点などを整理し、ドイツ教育関係の研究会において報告する機会を得た。これらについては近々、研究論文として公刊、あるいは学会報告として公表する予定である。 本年度明らかにしてきたのは次のような点である。学校の自律性を高め、個々の学校が独立して自校の生徒及び地域社会の必要に即したプログラムを編成できるようにする「学校プログラム」政策は、ほとんどすべての州で積極的に推進されている。そこにはいわゆる保守・社民の相違はないように見える。政策の導入の「意図」については様々な差異あるいは重点の違いがあるようである。これに関しては、平成16年度においてさらに深く究明していく。学校が独自に資金を提供する「スポンサー」を持つことを認める「学校スポンサリング」は、これまであまり知られてこなかったが、ドイツでは急速に浸透・普及している。スポンサリングは、(1)他の文化・社会活動分野での企業による財政支援活動の教育分野への拡張、(2)企業の広告戦略の新たなフィールドである公共施設の一部としての公立学校への注目、(3)学校側からの、地域社会に開かれた学校づくりの一環としての企業への接近、という三つの観点から理解できることを明らかにした。理論的実際的な問題点としては、スポンサリングの拡大が必然的に伝統的な「教育の機会均等」を損なうこと、「機会均等」の再定義を導くものであること、を明らかにした。
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