本研究は、アメリカのマサチューセッツ州を事例として、同州で進行中の公立学校における児童・生徒の学習内容を測定・評価するテスト政策(言い換えれば、教育アセスメント行政)の構造を解明することである。平成15年度における本研究の途中経過ならびに成果は、第1には、ボストン市の教育委員会を訪問し、担当の職員にボストン市の学力向上政策に関する取り組みをインタビュー調査したこと、マサチューセッツ州の議会図書館、ボストン市の公共図書館などで資料調査と資料収集を実施したことである。現在、これらのインタビュー調査や一次資料の分析は進行中である。第2には、マサチューセッツ州の教育アセスメント行政とテスト政策に関する基本的な文献を収集し、同州におけるアセスメント行政の特色と実態に関する研究書の分析を行った。 第1と第2の研究を実施する際の視点は、1993年に成立する「サチューセッツ州教育改革法」の成立以後1998年に実施される「マサチューセッツ州総合評価システム」(Massachusetts Comprehensive Assessment System)(=MCAS test)の実施状況や諸問題を解明することであった。本研究の重大な成果は、同州における教育アセスメント行政の展開が州知事(共和党)主導のトップ・ダウン方式の厳しいアセスメント行政の断行であったことを解明したことである。同じく、同州ではカリキュラムの標準化も実施され、その学習内容を評価するテスト政策が導入されたことも判明した。以上、本研究はマサチューセッツ州の教育改革の文脈の中に、同州の教育アセスメント行政の実態やあり方を構造的に位置づけることを試みた。その具体的な成果は、北野秋男2003「<研究ノート>マサチューセッツ州におけるテスト政策と教育アセスメント行政の実態-マサチューセッツ州総合評価システムの成立と影響-」『教育学研究』日本教育学会、第70巻、第4号、PP.89-98に収録されている。
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