研究概要 |
本年度は、これまでの研究成果を継続しながら、マサチューセッツ州における教育アセスメント行政の構造を総合的に解明した。とりわけ、同州における教育アセスメント行政が学区・学校・教員の評価、高校卒業要件への利用、教育財政改革、バイリンガル教育の廃止政策にも適用されたという政策動向に言及しながら、その基本的な構造を解明した。具体的な研究成果としては、日本教育学会第64回大会の特別課題研究『教育改革の国際比較-学力政策-』において、「マサチューセッツ州における学力向上政策とMCASテスト-州知事主導型教育改革と教育アセスメント行政-」(東京学芸大学)と題して、口頭発表を行った。同報告の内容は、2006年の日本教育学会『教育学研究』(第73巻第1号)にも掲載予定である(現在、印刷中)。 また、マサチューセッツ州における州知事主導型の教育アセスメント行政の一環として、バイリンガル教育廃止問題が検討された問題に関しても研究を展開した。同州におけるバイリンガル教育廃止運動は、州知事・州教育機関、州議会、州住民による「三つどもえ」の政治的対立であり、その結果、2002年には同州のバイリンガル教育廃止問題は、州議会で成立したバイリンガル教育プログラムを学区の自由裁量を認める法案と州住民の直接投票で成立したバイリンガル教育プログラムの廃止法案が同時期に成立した。いわば、バイリンガル教育の存続と廃止を求める真反対の法案が成立し、バイリンガル教育に関するダブル・スタンダード状態を生み出し、同州の教育現場の混乱を招く要因になっている。なお、この研究成果は、「マサチューセッツ州におけるバイリンガル教育廃止運動-州知事、州議会、州住民による政治的対立に焦点を当てて-」と題する研究論文が、日本比較教育学会『比較教育研究』第40号,2006年1月,pp.67-85に掲載された。 2005年度を含めた科学研究費を受領した3年間の研究成果・研究活動の内容は、科学研究費報告書『アメリカの教育アセスメント行政の構造研究』と題して、刊行した。
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