本研究は、分権改革を背景にしていくつかの市町村で実施されてきている教育長(教育委員)公募制の実態を調査・分析するとともに、この制度の導入・実施が教育長および教育委員会のあり方、さらには教育委員会の活性化にもたらしたものを実証的に明らかにすることを目指したものである。 本年度の研究成果の概要は以下のようなものである。 i)公募制を実施した15市町村の基本的資料(公募要領・課題論文・選考委員会の構成・応募者数・公募教育長のフェースシートなど)をほぼ収集しその一覧表を作成するとともに、制度内容の共通点と相違点および各事例の特徴を把握できたこと。 ii)昨年の5市町村(原町市、白河市、青ヶ島村、西有田町、朝日町)に加えて、新たに国立市(東京都)、蒲原町(静岡県)、富士見町(長野県)、西春町(愛知県)の4市町を訪問し、当該首長・公募教育長に聴き取り調査(インタビュー)し、公募制導入の背景と趣旨、制度の特徴と運用の実際、公募教育長の応募動機・課題意識および教育行政施策の特徴などを具体的に把握することができた。総じて、それらは予想していたよりかなり多様かつ複雑であり、慎重な比較検討が必要であることが分かった。 iii)公募制の導入・実施が教育長の資質とあり方(教育長像)および教育委員会のあり方(活性化)に提起している様々な論点を明らかにすることができた。 なお、本研究の中間的成果を日本教育政策学会(平成16年7月、山梨学院大学)で行った。現在、2年間にわたる研究の報告書の作成に取り組んでいるところである。
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