18世紀の古典的自由主義は、自由な市場を阻害する封建的支配秩序を否定の対象としていた。19世紀の新自由主義は、経済恐慌や労働者階級の成長に対応し、自由放任主義を放棄、国家干渉のもとでの自由主義を実現する目的を持っていた。したがって、義務教育制度をつくりだした「新自由主義」は、もともと、国家による「干渉」を前提にする。それゆえ、義務教育は、「干渉教育」なのである。フランス第三共和制において、義務教委育制度が成立した。Leon Duguitは、義務教育という国家の関与について、伝統的自由の観念と矛盾はしないとのべる。フランス革命期、Condorcetは、教育機関の国家からの自由を特に重視していた。しかし、Condorcetは、初等教育については、国家の関与を認めていた。Duguitはそこに注目し、義務教育を正当化する。国家の関与は、愛国心教育の場面で、特徴的となる。19世紀後半、義務教育における愛国心は、公民教育とラ・マルセイエーズの教育であった。第5共和国憲法第2条では、「国歌は「ラ・マルセイエーズ」である。」と規定されている。1985年、文部大臣は、ラ・マルセイエーズの教育を徹底する通達を出した。しかし、一部の教員の反発から、ラ・マルセイエーズは義務とならなかった。2003年、刑法が改正され、国歌への侮辱は、7500ユーロの罰金とされた(6ヶ月の拘留を含む)。そして2005年春、「学校の未来」法案審議の過程で、ラ・マルセイエーズを、小学校の公民教育の中で義務化する議員立法が出された(2005年2月11日)。政府は、その判断を議会にゆだねる。その結果、ラ・マルセイエーズ義務化の法律が成立した(3月29日可決)。新自由主義的改革における愛国心教育の強化であるかどうか、検討課題としたい
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