本研究は、親の育児力・教育力を組織的に高めていくために、親の生涯発達という視点から親教育・親支援のための効果的なプログラムを作成することを目的としている。子育て支援の先進国といわれているニュージーランドでは、テファリキという共通の幼児教育カリキュラムを基盤に、「プレイセンター」など親主体に運営管理する保育実践を進めている。そこでは親自身が乳幼児期の発達や遊びについて系統的に学習する統一プログラムを作成して専門職に準ずる指導者の養成を行っており、わが国でも学ぶべき点が多々みられた。わが国の行政による子育て支援の実態を明らかにするために、全国の市教委と市長部局への質問紙調査および主要都市での聞きとり調査を実施した。その結果、(1)市教委と市長部局はそれぞれ学校教育(幼稚園児・小・中学校児童生徒の親)、母子保健(乳児幼児をもつ親)を主たる対象としているが、今後は市民生涯学習やボランティアの育成、親になる前の準備教育なども推進していく方向であること。(2)縦割り行政を改善して、双方の効果的な分担・共同体制を進めていくことを課題としている。(3)地域全体の教育力を高めるために、行政の役割としては、家庭と学校と地域(企業含めて)三者を繋ぐパイプ役として、地域の人材育成や人材活用を推進することが重要と考えられている、などが明らかになった。また、全国の市教委や部局から寄せられた様々な実際の講座や活動の実態から、親の生涯発達という視点でのプログラム作成に、多くの具体的な教育内容に関する知見を得た。以下にプ・グラムの枠組み示す。 親としての発達を横軸にとり時系列的に、1)親準備期(中高生:青年期)2)親成長期(妊婦・乳幼児・児童生徒を持つ親:子育て期)3)親育成サポート期(成人した子を持つ親:中高年期)とし、縦軸には、教育・支援内容として、1)知識や技能の学習2)交流・親睦・体験3)支援・育成・貢献の領域をとり、児童期から親として必要な学習や体験、地域貢献や養成へと発達していくプログラム枠を作成した。今後は、地域のニーズに即した学習活動や具体的な教育内容の検討をさらに進めたい。
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