我が国においては、実際の学校選択制度の普及は緒についたばかりの段階であるが、「学校選択制度」を巡る論争の大きなテーマのひとつは「選択の自由」の保障と、選択における「公正さ」・「選択における平等」をどう確保するか、を軸として展開されてきている。イギリスでは1990年の学校選択自由化の導入以来、各自治体が様々な学校選択制度を設定し、運用している。本研究は、イギリスの各自治体の多種多様な学校選択制度において、「選択の自由」と「公正さ」の二相をどのように調整しているかを明らかにすることを課題とする。 本年度は、S.ゴラードの社会的分離の指数を、過去に入手したエイヴォンLEAのデータに適用し、また、GCSEの学校ごとの成績と貧困との関係を分析した。その結果、無料給食受給資格者率が高い学校ほど、GCSEの成績を上げにくいことが明らかになった。また、社会的分離の変化とその方向性は地域によって異なることが確認されたが、競争の程度と分離の方向性との関係性は確認できなかった。このような知見をもとに、すべてのLEAに対して、各中等学校の入学者数・入学定員・無料給食受給資格者数等のデータを提供していただくことを依頼した。その結果、3分の1弱のLEAからデータの提供を受けられた。これらのデータをもとに、S.ゴラードの社会的分離の指数等のデータを計算した。今後、マクロなレベルでの学校選択制度と社会的分離の関係をこれらのデータを駆使して分析する予定である。
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