我が国においては、実際の学校選択制度の普及は緒についたばかりの段階であるが、「学校選択制度」を巡る論争の大きなテーマのひとつは「選択の自由」の保障と、選択における「公正さ」・「選択における平等」をどう確保するか、を軸として展開されてきている。イギリスでは1990年の学校選択自由化の導入以来、各自治体が様々な学校選択制度を設定し、運用している。本研究は、イギリスの各自治体の多種多様な学校選択制度において、「選択の自由」と「公正さ」の二相をどのように調整しているかを明らかにすることを課題とする。 本年度は、ゴラードの「分離指数」およびノーデンの「集中指数」を用いて、学校選択制度によって社会的分離がどう変化したのかをとらえるための分析を行った。指数計算のためのデータを地方教育当局より提供してもらうことのできた40余りの地方教育当局データに関して上記の分析を行った結果、以下の点が明らかになった。 学校選択制度は6つの類型に分けられるが、社会的分離はこの10年間に増加・減少・変わらないなど、地方教育当局単位で見た場合、様々である。このうち選抜制の中等学校が多い地方教育当局では、分離が高い傾向が見られた。また、6つの類型のなかの1タイプであるバンディング・システム(どの学校も入学者の能力分布が一様になるようにするシステム)をとる場合、少なくとも2000年頃までは分離が下がる傾向があった。その他のタイプの学校選択制度と分離の変化には明確な関係性はうかがえなかった。
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