我が国においては、実際の学校選択制度の普及は緒についたばかりの段階であるが、学校選択制度を設計するにあたっては、「選択の自由」の保障と、選択における「公正さ」・「選択における平等」をどう確保するか、この2相をいかに調整するかが課題のひとつであろう。本研究は、かかる問題関心のもとに、イギリスの学校選択制度を分析したものである。 まず、(1)イギリスの学校選択制度を、擬似市場論の観点からとらえることにした。具体的には、イギリスにおける代表的恋擬似市場研究者の論を整理・検討することによって、「規制」の在り方についての示唆を得た。各論者に共通的に言えることは、公正を確保するためには、なんらかの規制が必要であるという主張であり、LEAに一定の役割を課す提案が注目すべき点の一つである。次に、(2)イギリスの実際の学校選択制度の構造を分析した。保守党のもとでの学校選択制度は、「自由市場」にできる限り近い「擬似市場」を構成することが目指されていた。労働党政権(第1期)下では、LEAに一定の権限がもどされた。最後に、(1)(2)の分析を踏まえて、実際の学校選択制度をLEAの権限との関係から分析した。ここでは、保守党・労働党を通じて、もっとも基本的な権限である中等学校への進学手続きの設定、なかでも通学区域制を公正との関係から分析を行った。しかしながら、通学区域制の諸類型と公正との間には明確な関係性は、見い出せなかった。今後、人口動態や志願者の集中度等様々な要因を含めた分析が必要とされるであろう。
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