本研究の目的は、イギリスの社会学者ギデンズの「自己の再帰的プロジェクト」という概念によって、後期モダン社会を生きる若者たちのアイデンティティの構築・再編のプロセスを、特にそのプロセスにおける「ローカルなもの」の意味づけに焦点を当てつつ、掴むことであった。この目的の達成のために本研究において行ってきた主な作業は、(1)ギデンズのモダニティ論・自己アイデンティティ論を中心に、彼の主要著作とそれらに言及している諸論考の読解・検討、(2)若者についての社会学的研究のサーベイ、(3)日本における社会学的自己論の研究動向のサーベイ、(4)沖縄の若者たちのアイデンティティの構築・再編の現状の社会的背景に関わる既存諸データ(学校から職業への移行に関わる統計データなど)の収集・検討、(5)インタビュー調査とそこから得られたデータの分析を通じて沖縄の若者たちのアイデンティティの構築・再編過程の実証的把握、(6)2001-2002年度に私が行った質問紙調査のデータの再分析を通じて沖縄の若者たちのアイデンティティの構築・再編過程の実証的把握、であった。これらいずれの作業も、昨年度・今年度と2カ年にわたって並行して取り組んできたものである。 本年度は、以上の(1)〜(6)の作業に加えて、特にその終盤、それらの成果を「研究成果報告書」にまとめるための作業に時間を費やした。報告書は、(1)〜(6)のうち特に、(1)の成果としてギデンズのモダニティ論・自己アイデンティティ論の概観、(5)の成果としてインタビュー対象の沖縄の若者たちのアイデンティティがどのようなものとしてあるかの分析を中心に、その内容を構成した。
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