ベトナムの教育セクター援助協調には、(1)これまでの政府側が蚊帳の外にいた過去のドナー問の調整から、ESGを通じ、政府に主導権を"持たせた"ドナー・政府間調整のシステム構築へ、(2)過去の棲み分け的な消極的調整から、ドナーの枠を超えて「不利な状況下の子供への初等教育普及(PDC)」あるいは特定財政支援に代表されるドナー間の協調行動(脱単独ドナープロジェクト化)へ、(3)サブセクターレベル、対象分野・地域の調整から、上位のセクターレベルでの組織的な政策協調へ、という動きがみられる。特に、援助が集中している初等教育に注目すれば、初等教育重視という協調から大集中の初等教育の対象領域・地域の重複回避という協調へ、そして更に、初等教育への支援の統合化(PDC、特定財政支援からセクターワイドプログラムへ)へという受動的なものから能動的なものへと"進化"をしてきている。これらは大きな変化であり、第二世代の協調とも呼ぶことができよう。 協調の名の下に、政府側の論理・事情とドナー側の論理・事情を必要以上に協調、あるいは協調を強化、努力、洗練化しようとすれば、取引費用削減のはずが、知らず知らずのうちに協調努力のための協調プロジェクト化あるいは協調倒れなどという取引費用の増加に繋がるというジレンマを孕んでおり、オーナーシップとパートナーシップの尊重という一見合理的な発想が実態と乖離することから来る危険性を充分認識する必要がありそうである。 完全な調和化、協調などありえないということ、オーナーシップの問題にしても援助活動におけるドナー・被援助側の力関係と緊張関係を持つこと、などを考えれば、どこで折り合いをつけるか、どこでバランスを取るべきかが問題となる。しかし、政府側のオーナーシップあるいはリーダーシップと言いながら、想定されているのはドナーの意向に沿ったものが期待されている現実がある。
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