地方分権改革の第2段階である三位一体改革下での市町村教育計画に関する新たな動向を分析した。市町村教育計画の分析視点を明らかにした上で、今後相当の長期間にわたって成し遂げられるであろう地域主権のもとでの市町村教育の計画化の見通しを得ることを目的に、次の2点を研究の中心においた。 1.市町村教育計画に関わりが深い都道府県知事、県教育長、各県町村会長、各県教員団体責任者に対する教育施策の将来性に関する意識調査を実施し、計画を策定する際の基礎的な要件を明らかにした。これら4者は教育計画が実現すべき課題について、意見が一致する程度は必ずしも高くはない。しかし、教育施策の将来性について、教育団体責任者を除いて確かな見通しを共有していること、教育への地域住民の参加のみ4者共通して支持していることなど、教育施策をめぐる意識構造の特徴が明らかとなったことは重要な成果である。計画策定の際、今後の検討が望まれる。 2.義務教育費の交付税交付金への財源委譲の問題は、三位一体改革期の論争のなかで最大規模のものであり、これを詳細に分析することをめざした。交付税化推進は政府、地方6団体の一致した見解であった。このことの真意が論争の時系列的な分析から浮かび上がって来た。これに対して、文部科学省の主張する機会均等の維持ということは地方団体側の真意と矛盾するものであるのか。交付税か補助金か、が地方自治体の教育予算の安定性(教員給与の安定性)の維持から議論され、地方団体の真意である将来の地方自治体教育のあり方を自治体自身が決定する方向への大きな改革であることを踏まえた議論が弱いまま、一定の結論に達し議論は終了した。これからの議論はどう続くのだろうか。
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