本研究は、日本における造形美術教育において、内在する問題点や課題の分析・考察と共に、それを少しでも解決、解消するための具体的な指導方法の改善を考察したものである。そのために、教科として、初等・中等教育を一貫したカリキュラムガイドの提案と共に、実際に教育現場への有効な貢献を目指して、実践的な研究を目指した。 実質的な授業時間数が限られた中で、この教科は、何を求め具体的にどのように教育すべきなのか。ここに改めて、この教科の意義と教育内容を問い直す必要があると共に、抜本的な指導方法の改善も含めた、教科教育の再構築が図られねばならないと考えたのである。 第1に、4つの重要要素を柱にした初等・中等教育一貫カリキュラムガイドの提案である。 (1)ビジュアル教育(Sight Recognition Ability Education) (2)イマジネーション教育(Idea Ability Education) (3)クリエイション教育(Creation Ability Education) (4)ビジュアルコミュニケーション教育(Visual Communication Ability Education) ここで主張している教科一貫カリキュラムガイドは、題材を並べた年間指導計画や教育課程ではなく、教科の本質をおさえ各校の特徴を生かし児童や生徒の実態に合わせて、教師自身の個性や特性も発揮できるような理想的なカリキュラムが実現されるためのガイド・指針を目指している。 第2に、この教科カリキュラムガイドによる学校現場における実践的な検証である。そのために、本研究代表者が授業者となり、附属小学校の児童を対象に実際に授業を展開し実証研究を行った. 第3に、この教科一貫カリキュラムガイドとの関連を明記し、教育のねらいを明確にした教育実践事例の提案である。附属学校の教師、現場教師を含む大学院生、研修生の協力で、小学校及び中学校の多学年、多様な分野の題材における実践事例を集めて教育実践事例集にまとめることができた。 本研究の今後の課題は、さらにこの教育実践事例を充実させると共に、インターネットを活用し研究成果を教育現場へ反映させることである。次期研究課題は、それが実現できるようなe-Leaning教育システムの構築を目指していきたい。
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