平成15年度に、信念の様態(信念システム)を捉えるために先行研究を検討して構築した「書くことに対する態度獲得モデル」に基づいて、本年度は調査研究を実施した。目的は、「態度への信念」から「行為への意図」へと進む側面に力点を置いた「情緒論的モデル」の適切さとその重要さとを確認するためである。 調査は、小学校(4年・5年・6年、各1クラス、2005年3月4日実施)と中学校(2年、3クラス、2005年2月21日・22日実施)を対象に、質問紙法での記述調査である。小学校と中学校での調査用紙は、一部の字句と調査項目を除いて、ほぼ同じ項目で実施した。調査内容は、ジャンル選択意識の変容を確認することが中心になっている。 調査の結果、ジャンル選択意識の発達変容には、学校での作文の授業や作文行事への指導者の対応(特に指導者のジャンル概念やジャンルの選択・指導の実態)が大きく影響することが明らかになった。学習者個人の執着部分(信念の中核部)が、指導者からの単調なないし反復される指導のために背景化し、そのために、自主的にテーマやジャンルを選択する意欲の向上や、自由な表現方法の選択能力の発達に影を落としている実態が明らかになった。この傾向は、学年進行に沿ったいくつかの特徴をもっていることも確認された。この諸結果については、改めて関係の研究文献による検討を加えて、信念の様態を解釈するために、メタ分析を実施した。 なお、今回の調査では、当初の研究計画にあった「ジャンル選択にかかわる[対話としてのジャンル]の考え方」を明確に捉えることはできなかった。調査を質問紙法によるものに限定したためである。 以上の結果と平成15年度の研究成果をあわせて研究成果報告書を刊行した。
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