本研究の目的は、作文能力の基盤となる書くことについての「信念システム」をモデル化し、このモデルに沿って、書くことについての学習者の信念の様相を捉えることである。特に、書くことに対して否定的な信念がどの程度どのような要因によって肯定的な信念に変化するかが研究の焦点となる。そこで、信念の様相を把握するためのアンケート調査を実施し、そのデータを信念システムのモデルに即して分析することで、信念の様相のダイナミズムを記述しようとした。 本研究の成果は以下のとおりである。 1.Fishbein-Ajzen(1975)モデルやHayes(1996)モデルを参照して、信念システムの基本構造を確認した。 2.書くことについての信念の様相を捉えるためのアンケート調査を実施した。実施対象は、小学校4・5・6年生、中学校2年生である。 3.アンケート結果を分析して、信念の様相を記述研究し、以下のような知見を得た。 1)書くことの否定的な信念と肯定的な信念が形成される時期についてのデータが得られた。また、その形成要因が多分に曖昧であることが判明した。 2)書くことについての意識のうち、ジャンル意識がいつごろからメタ認知レベルに到達するかについての基本データが得られた。 3)信念の形成も含め、教師および学校での指導内容が大きく影響していることが明らかになった。
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