研究概要 |
ニュージーランドのスキルには,すべての教科に共通するコミュニケーション,問題解決などがあり,各教科ではそのスキルの目標を各教科で達成できるようにシラバスが組まれている。本年度の本研究では,ニュージーランドのスチュワート島での過疎学校における年間授業計画や授業案に基づき、過疎地域での社会科のスキルをわが国の過疎地域の学校教育との比較で分析した。その結果,以下のことが明らかとなった。まず,ニュージーランドでは,スキルがレベルに応じて到達目標が示されており,年間指導計画も2カ年を見通して作成されており,長期的に,しかも段階的にスキルが育成されている。しかし一方で,スキルや概念的知識が到達目標となっていることから,題材は各学校の独自性に任せられるのだが,スチュワート島の学校では島の独自性を活用した題材は少なく、むしろ全国的に汎用性のある学習内容となっている。それは,島には小学校しかなく,中間学校および中等教育を受けるためには島をでなければならず,島外の子どもたちと同じ知識をもっていることが要求されていることが背景にある。このことは、わが国の過疎地域の学校の学習内容およびその背景と共通したものとなっている。すなわち、ニュージーランドでは,都市部の学校では,その学校および学校がある地域の独自性を生かした教育内容が組め,ニュージーランドのシラバスの特徴を十分に反映しているが,過疎地域では,わが国の場合と同様に知識の基礎・基本が重視され,その学校および地域の特性を反映した学習内容が組みにくくなっていることが明らかとなったのである。
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