研究概要 |
本研究の目的は,幼稚園における道徳教育プログラムを開発することである。小中学校と比べ,幼稚園教育には幼児の道徳発達を援助するプログラムはわずかしか存在しない。本研究では,子どもの道徳発達に関する心理学的研究の成果を踏まえ,また幼稚園現場での実践事例の収集と分析を通して,幼児期の子どもの道徳的自律を支える環境づくり,道徳的体験を促す活動と仲間遊び,道徳教育に有効な絵本等の資料,教師の役割を包含した教育プログラムを開発する。さらに,このプログラムの評価を目的として,幼児の道徳発達と学級の道徳的雰囲気を測定する方法を考案する。 平成15年度は,まず幼稚園における道徳教育実践事例の収集を行った。資料集として記録の残っている実践を収集し,分析用にデータ化していった。データ化の観点として,幼稚園の規模や幼児の年齢といった要因のほか,「道徳発達の援助が必要な場面」と「教師の援助・指導」を軸にした。また,文科省あるいは県の研究委託を受けた幼稚園5カ所(埼玉県,福島県,千葉県)をまわり,実践の基盤となった教師の考え方を聞き取り調査した。幼稚園での道徳教育に有効な絵本,劇的活動,現場教師のアイディアなどを収集し,整理した。 次に,幼児の道徳発達評価方法の開発,および園内の道徳的環境の評価ガイドラインの作成を検討した。まだ探索的な水準であるが,幼児の対人行動(思いやりと自己表現)と社会的規範意識を通して道徳発達の評価方法案を作成した。さらに,教師のかかわり方,職員間の協力体制,家庭との連携のあり方を幼児の道徳発達の環境ととらえ,それらを評価し改善する上でのガイドラインを作成した。これは教師による自己評価の形式を採用した。これらの妥当性の検討は平成16年度の課題である。
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