研究概要 |
本研究の目的は,幼稚園における道徳教育プログラムを開発することである。小中学校と比べ,幼稚園教育には幼児の道徳発達を援助するプログラムはわずかしか存在しない。本研究では,子どもの道徳発達に関する心理学的研究の成果を踏まえ,また幼稚園現場での実践事例の収集と分析を通して,幼児期の子どもの道徳的自律を支える環境づくり,道徳的体験を促す活動と仲間遊び,道徳教育に有効な絵本等の資料,教師の役割を包含した教育プログラムを開発する。さらに,このプログラムの評価を目的として,幼児の道徳発達と学級の道徳的雰囲気を測定する方法を考案する。 平成16年度は,保育の質を大きく左右する要因として,保育者の保育信念とストレス対処能力について調査を行った。いずれの調査も,東京都と千葉県の公立及び私立の幼稚園教師が対象になった。信念については254名,ストレスについては420名の協力があった。幼稚園教師は幼児期の思いやりの発達にとって仲間との相互作用経験が最も大きく影響すると考えており,仲間とのトラブルに対しては教師は見守るという態度が有効であると信じていた。このような信念をもとに,保育環境をつくり出すと考えられる。また,幼稚園教師は平均10時間も園で仕事をしており,ストレス反応を示す者も少なくなかった。慢性的にストレス反応を示す者は,子どもに対する言動にもストレスからくる乱暴な言葉づかい等が目立つと報告していた。 絵本を用いた教育プログラムを試作し,東京都の区立幼稚園教師一人が実践を行った。絵本通して,子どもの道徳的な感性,言葉の感覚,友達や幼稚園に対する興味が総合的に育成されていくことが示唆された。
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