本年度は、家庭科における「いのちの教育」カリキュラムを開発するにあたり、これまでに実践・報告されている授業を中心に関連資料・文献・教材・ビデオ等を収集・分析した。近年は、「いのち」「生」「死」をテーマにした当該資料が多く出回るようになったが、それらが総括的に体系化されているわけではない。今後は、関連する概念の整理が重要かつ不可欠であるといえよう。 また、これまでタブーが強かった自殺に関する出版物も増え、遺された家族、特に子どもからのメッセージもみうけられるようになった。しかし、自殺に関わる偏見は依然として強く、学校現場でも極めて慎重な対応をしており、"難しい問題"から"教育に関わる重要なテーマ"への移行には、時間を要するものと思われる。 家庭科関連では、関係雑誌等に授業実践例やカリキュラム案が散見された。分野として多かったのは、「食」と「いのち」を関わらせた実践である。人間の「食べる」という行為が他者の「いのち」とどう関わるのか多角的に追求しようとしたり、農薬等の環境問題と関わらせたり、不正表示等の消費者問題と関わらせたりするなかで、「いのち」に関わる重要なテーマとして「食」を扱う傾向にあった。 その他、「保育」と「誕生(生)」を関連させた実践や、「高齢者」と「生・死」を関連させた実践もみられた。高等学校では、「死」を見据えた生活設計を立案させたり、地域の冠婚葬祭や通過儀礼を調べることで「生」「死」に関わる生活文化を理解させたりする実践もあった。 申請者が、平成12・13年度に実施した授業については、一部を活字に起こして冊子に整理した。
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