本年度は、中学校3年生を対象にして授業協力者が実践した家庭科の授業を参観し、引き続き授業検討会を実施した(北関東:私立中学)。「保育」分野に関連したテーマを軸に、半期の授業が構成されており、前半冒頭部分で、「死」について考える内容が設定されていた。参観した授業は、テーマ全体の後半部分であるが、申請したビデオで録画し、必要な場面や資料は申請したデジタルカメラで記録した。 まず、キューブラー・ロス著の子ども向け絵本『ダギーへの手紙』を題材に「死」について考えた。この本は、脳腫瘍を患い、余命3ヶ月を宣告されたダギー少年が、自らの死について「いのちって何?死って何?どうして小さな子どもが死ななければいけないの?」と著者に問い、それに答えた手紙が書かれた絵本である。生徒たちは、著者と同様に、ダギー少年の「いのち」「死」に対する問いについて考え、返事を書いた。自ら考えるとともに、相互に意見交換し、ロス氏の『手紙』を読み、感想をまとめる、といった流れで授業が展開された。 生徒たちのワークシートの記述内容を確認すると、「いのち」や「死」に対する捉え方が個人的であること、つまり画一化された正解があるわけではないことに気づいていた。また、授業内容そのものに深く感銘を受けている様子がうかがえた。したがって、こうした問題について真剣に考える機会を保障することの必要性が示唆されたといえよう。 来年度は、今年度の実績を踏まえて引き続き授業参観・内容分析を行う。後半は、これを受けて家庭科におけるいのちの教育カリキュラムに関する研究会(シンポジウムなど)を実施し、家庭科で「いのち」や「死」を取り上げる可能性について検討したいと考える。
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