本年度の研究では、第一に歴史カリキュラム開発の基礎となる研究として、歴史構成主義に基づく歴史教育論が基礎としている認識論や認知論を明らかにした。特にそのキー概念である「歴史の意味構成」や歴史の意味理解におけるテキスト(史料)の役割などが歴史理解の上でどの様な機能をもっているのかを明らかにしようとした。このために、米国および英国で発行されている構成主義に基づく歴史教育論やさらにこの基礎にある歴史認識論、歴史研究方法論、認知心理学に関する邦文文献を基にして、歴史構成主義に基づく歴史教育論にある歴史理解の構造や学習者に形成させる歴史理解の構造を明らかにした。 次にカリキュラムにおいて展開する歴史授業の構成原理および歴史カリキュラムの構成原理を明らかにするために、米国および英国の歴史教育研究者や歴史教育研究団体が提唱している構成主義的な歴史学習の代表的な理論や実践を収集して分析した。本年度は特に、認知構成主義に基づく歴史授業の典型と思われる1960年代から70年代にかけて展開した新社会科のアマーストプロジェクトの単元プランを収集、分析して認知構成主義に基づく歴史授業の構成原理と歴史カリキュラム原理を明らかにした。アマーストプロジェクトに関する全資料はコロンビア大学にあるので現地で資料収集と調査を行った。 また小学校における構成主義に基づく歴史教育研究の典型である米国の研究者L.S.LevstikとK.C.Barton.およびJ.BrophyとB.Van Sledrightの二組の歴史教育論に焦点を当ててこの論の分析を行い、授業原理の抽出を行った。
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