研究課題
基盤研究(C)
本研究では、歴史教育において従来から批判されてきた小・中学校の通史の繰り返し学習の問題の解決に焦点を当て、通史の繰り返し学習ではなく、小学校と中学校を一貫して段階的に歴史認識を発展させるような歴史カリキュラムを開発することを目的にした。この目的を達成するために、米国で発展してきた構成主義(構築主義)の歴史教育論や歴史学習論に手がかりを得て、望ましい歴史カリキュラムの構成原理や歴史授業の構成原理を明らかにした。構成主義の歴史教育論については1960年代から70年代に新社会科のひとつとして開発された(1)アマーストプロジェクトのカリキュラム単元、(2)歴史教育学者シューマンの歴史教育論と彼が開発した歴史学習単元、(3)歴史プロジェクト『生きている歴史(History Alive)』、それに(4)資料を利用した歴史カリキュラムであるDBQプロジェクトを分析し、構成主義に基づく歴史カリキュラムの構成原理や授業構成原理を明らかにした。それらは大きくは1)認知構成主義に基づくものと2)社会構成主義に基づくものの2類型の構成原理でありる。それぞれはさらにいくつかの細かい類型に分けられる。構成主義に基づくこれらの歴史教育論では、歴史理解の問題はそれ自体は再現不可能な過去の出来事を史料(テキスト)を通して認識主体が再構成する作業、すなわち史料を基にした意味構成の問題としてとらえられているのである。ここでは基本的に、歴史的知識は認識主体が既有の信念、経験、知識などに由来する一定の見方や視点を基にして歴史的事実を意味づけ、個人がもっている意味のネットワークの一部として構成することによって獲得されるものと考えられている。また、歴史理解は本来この様な意味構成による歴史的知識の獲得過程を通して発展すると考えられている。さらに歴史理解は個人で完結するものではなく、社会的文脈の影響をたえず受けて、他者(子ども同士)との協働的な相互の知的交流活動に基づいて発展するものと考えられている。研究ではさらに、これらの構成原理を基にして新たに歴史カリキュラムを作るための基本枠組み(構成原理)を明らかにするとともに、明らかにした構成主義の歴史授業構成原理を基にして小学校と中学校の歴史授業を開発、実施して原理の有効性を検討した。最後に4年間の成果を研究成果報告書としてまとめた。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (8件)
福井大学教育実践研究 第29号
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社会系教科教育学研究 第17号
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Journal of Research on Education in Social Studies Department Contents Vol. 17
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